性感染症診療について

当院では男性の性感染症診療を行っております。残念ながら女性の性感染症につきましては当院での診療は困難であるため、他院(婦人科)への受診をお願いしております。なお、特に症状はないものの過去の行為などにより一度調べておきたいという方はブライダルチェックBコースをご利用ください。

以下に主な性感染症について簡単にまとめます。

主な性感染症

➀ 尿道炎【尿道からの分泌物や排尿時の尿道痛(排尿時痛)】を呈する疾患

クラミジア性尿道炎

全ての性感染症のうちで最も多い感染症がクラミジア(Chlamydia trachomatis)です。性行為により感染し、感染から1週間から3週間の潜伏期の後、尿道から分泌液が出る、あるいは排尿時痛が出現します。オーラルセックスなどによりクラミジアが咽頭に感染することもあります。(この場合は耳鼻科に紹介します。)女性では不顕性感染といって感染しても全く症状が出ず、知らず知らずのうちに不妊の原因となることが知られておりますが、近年では男性での不顕性感染も増加しております。尿検査でクラミジア抗原を同定することで確定診断となります。ただし、検査結果は当日には判明しません。抗生物質の内服治療を行いますが、セックスパートナーへの同時治療も必要となります。「性感染症診断・治療ガイドライン2016」では治療後2-3週後でのクラミジア再検査にて陰性化を確認することが推奨されております。

淋菌性尿道炎

淋菌による感染症であり、性器クラミジア感染症と並んで頻度の高い疾患です。性行為により感染し、2-7日間の潜伏期の後、排尿時痛や黄白色の膿性分泌物が出現します。1回の性行為による感染率は30%程度とされております。近年ではオーラルセックスによる咽頭感染、アナルセックスによる直腸感染などの性器外への感染が増加しております。尿検査によって淋菌抗原を検出する、あるいは淋菌を分離培養することで診断します(1週間程度かかります)。男性の場合、約20-30%の症例でクラミジアの混合感染が認められますので、淋菌性尿道炎が疑われた場合はクラミジア抗原の検索も同時に行います。治療は抗生物質の投与を行います。やはりパートナーの検査・治療が必要不可欠です。

非クラミジア性
非淋菌性尿道炎

尿道炎を引き起こす細菌はクラミジアと淋菌だけではありません。非クラミジア性非淋菌性尿道炎はクラミジア、淋菌以外による尿道炎であり、多くの細菌、ウイルス、寄生虫などが検出されております。潜伏期間は1週間から5週間で、尿道分泌物の排出、排尿時痛、排尿時のかゆみなどが出現します。尿検査で白血球(炎症細胞)を認めるがクラミジア、淋菌が検出されないことにより診断します。抗生物質による治療を行います。

➁ ペニスにできもの(いぼ)ができる疾患

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルス1型あるいは2型の感染によって性器に浅い潰瘍形成や水疱形成をきたす疾患です。感染したウイルスは神経を伝わって上行し、腰仙髄神経節などに潜伏感染します。何らかの刺激を受けると潜伏感染したウイルスが再活性化し、神経を下行して再び病変を形成します。そのため、性器ヘルペスの発症には、ウイルスに初めて感染したもの(初感染)と、既に潜伏感染していたウイルスの再活性化によるものの2通りがあります。初感染の場合、性交渉により感染し2-10日間の潜伏期後に性器に病変が出現します。典型的には、まず痒みや違和感を伴った水疱が出現し水疱が破れて融合し潰瘍となります。鼠径部のリンパ節が腫れたり尿道分泌物がみられることもあります。病変は亀頭部や陰茎体部に多いですが、アナルセックスによって肛門周囲に病変が出現することもあります。性器ヘルペスの治療には5-10日間、抗ヘルペスウイルス薬を用います。再発を頻繁に繰り返す方には抗ヘルペスウイルス薬の継続投与による抑制療法を行います。

尖圭コンジローマ

ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)の感染による疾患です。HPVには180種類以上の遺伝子型が存在しますが、尖圭コンジローマの90%はHPV6または11型によるものです。性交渉によって皮膚あるいは粘膜の小さな傷からこれらのウイルスが侵入し表皮の細胞に感染を起こし、3週間~8カ月間の潜伏期を経て、性器(亀頭部や冠状溝など)にニワトリのトサカもしくは乳頭状のイボができます。潜伏期が長いため感染機会を特定できないこともしばしばあります。治療法としては、クリームの外用による薬物治療と、凍結療法やレーザー蒸散などの外科的治療があります。当院では薬物治療のみ行っており、外科的治療は行っておりません。薬物療法ではウイルスの増殖を抑える効果とウイルスに感染した細胞を破壊する効果を併せもつイミキモド5%クリームを患部に塗布します。イミキモド5%クリームは月・水・金あるいは火・木・土と週3回隔日で患部に塗布し、6-10時間後に石鹸で洗い流します。寝る前に塗って起床時に洗い流すのがよいでしょう。クリームでの治癒率は60%を超えますが、消失までに比較的時間を要します。尖圭コンジローマは3カ月以内に約25%の症例で再発がみられます。

梅毒

性行為による梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum:TP)の感染です。皮膚や粘膜の小さな傷からTPが侵入することによって感染し、血液を介して全身にさまざまな症状を引き起こします。感染後約3週間経過するとTPの侵入部位が硬くなります。これを初期硬結と言います。やがて初期硬結は中心に潰瘍を形成して硬性下疳となります。男性では亀頭や包皮が好発部位となります。初期硬結や硬性下疳の出現後、鼠径部のリンパ節が腫れてきます。これらは第1期梅毒と呼ばれ、放置していても2-3週間で消退します。約3か月後に第2期梅毒となり、全身の皮膚及び粘膜の発疹や臓器症状がみられるようになります。当院では血液検査で抗体価を測定し診断を行っておりますが、感染の初期では陰性となることもありますので、強く疑われる場合には時間をあけて再検査を行います。梅毒の治療には一般的にペニシリンという抗生物質を用います。薬を使う期間は病期によって異なります。(第1期では2-4週間です。)治療効果は抗体価とよく相関すると言われますので、血液検査にて抗体価を定期的に測定し判定していきます。日本で梅毒と診断された患者数は一時は年間500人を切るまでに減少しました。しかしながら、2011年以降、再び増加し2016年は4500人を超えており、注意が必要です。